www.KAMPOO.com
Since 2004

現在地: ホーム > 韓国旅行 > 韓国見聞録 > 久しぶりのソウルは…

久しぶりのソウルは…

By 竹下南

久しぶりのソウルは美しい街に変わっていた。
電車に、道路に、歩道にもやさしい心遣いが感じられて、その進んだ行政・新しい町作りに感心してしまった。

シークレット・ガーデン(ソウル平倉洞)

今回訪れたのは4月の初旬。桜とチンダルレ(진달래:つつじ)が咲き、新緑の街路樹には色とりどりの提灯が飾られていた。これは旧暦で祝うお釈迦さまの誕生日(석가탄신일=부처님오신날)に向けてのことだそうで、 あたりは花祭りらしいお祭りムードの賑わいを見せていた。タプコル公園(탑골공원)前のメインストリートも冬の寒々しさからは想像つかないほど明るく開放感であふれ、 仁寺洞(인사동)への道を進むと先生に引率された小学生たちがにぎやかに歩いていく。韓国にとって忘れられない「3月1日」から季節はわずか1ケ月ほどしか経っていないのに、 春の訪れは旅人の私をやさしく迎えてくれていた。

さて、ソウルを訪れるのは何年ぶりになるだろうか…。前回訪韓したのはコロナ前だったのでほんとうに長い間来なかったことになる。 最近、歳のせいか韓国愛が薄れてきて、このままフェードアウトしそうになっていたのを、待て!とばかりストップをかけてくれたのが実はズバリ「韓国ドラマ」だった。 ドラマを見ているうちにフツフツとまた韓国へ行きたくなり、あの場所・この場所、あのお店・このお店を次々と思い出し、懐かしいソウルへと誘ってくれた。 そしてドラマのロケ地へも… あ─、 もしドラマを見ていなかったら今回の訪韓はなく、もしかしたら「韓国」そのものも卒業していたかもしれない。 そう思うとあらためて韓国ドラマ及びエンタメ界の影響力の凄さを感じると同時に、「ドラマよ、ありがとう」と感謝の気持ちでいっぱいになる。

ところで韓国ドラマには必ずセレブの住む豪邸が登場する。ドラマによっても個々の家屋敷は異なるけれど、共通しているのは「坂道」に面していること。 邸宅はというと門のはるか先にそびえるように建っている。ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』の豪邸、また『シークレット・ガーデン』の平倉洞(평창동)の豪邸もしかりである。 韓国は地形上坂が多いので仕方ないのかもしれないが、こうした急こう配の地形では車なしの生活はありえない。 バスもない、車もない、歩くしかない庶民には暮らしたくても暮らせない場所だが、この格差がドラマではエンターテイメントとして盛り上がっていく。 まったく皮肉なものだけれど、ドラマとしては最高におもしろい!

振り返ってみれば2001年に当時NHKテレビ『特集:韓国なにが変わったのか ―兵役と若者たち―』でGODの歌声に出会って以来、K-popのコンサートに足繫く通い、 韓国内を旅行し、韓国文化に触れ、すっかり韓国に夢中になってしまったあの頃。そのころのソウルはまだ混とんとしていて、地下鉄車両には物売り、物乞いなどがいて驚きの連続だった。

ところが4半世紀経った今ではすべてがスタイリッシュに変貌して、街も人々も車内も見違えるようになった。 まだ日本では見かけない専用の「マタニティ・シート」が登場したこともうらやましい限りだ。

그늘이 그립구나(日影が欲しいなぁ)

そして今回私がいちばん感激したこと。これはぜひ東京にも作ってほしいと願う物。

それは信号待ちの歩道に設えられた大きな・大きなパラソルだ。大人が10人以上入ることができるほどのビッグパラソルが主要な交差点に設置され都会のオアシスを作っていた。 これがあれば炎天下でも信号待ちはつらくないし、突然の雨でも雨やどりができる。パラソルの中心部には椅子もあり、必要のないときにはパラソルを折りたたむこともできる。こんな素晴らしいアイディアは一体誰が考案したのだろうか。

久しぶりにソウルの街を歩いていたら、なんだか楽しくなってきた。

人に道を訪ねるとその場所まで連れて行ってくれるし、間違った方へ行こうとしたら、追いかけてきて正しく教えてくれる。

これは韓国人特有のやさしさかしら?
それとも私が白髪のハルモニだから?



言葉の勉強

석가탄신일: 釈迦誕身日。부처님오신날: お釈迦様いらっしゃった日。陰暦四月8日です。2025年は子どもの日らしいです。

然り/爾り(しかり): 「然り」とは、「その通りである」「そうである」「そのようである」という意味を持つ。古語の「然あり」に由来し、 漢文では「はい」「そう」と肯定を示す意味を持つ言葉として広く使われる。類似の言葉の「然れども」は、「然り」の否定形で「そうだとは言っても」「けれども」という意味である。 「然り」は、接続詞「も」の代わりとして用いることもでき、文中で「~然り、~然り」と並列させる用法も一般的である。 この場合、人物など名詞の後に「然り」が続くことが多い。また、「恋に然り」のように、感情を表す言葉の後に「然り」が付くこともある。

足繁く(あししげく): 「しょっちゅう」、「頻繁に」という意味で、「足しげく」とも読みます。何かを頻繁に行ったり、場所へ何度も行ったりすることを表します。 例えば、「そのお店に足繫く通う」は、「そのお店にしょっちゅう行く」という意味になります。

豪邸(ごうてい): 大きく豪華に建てたやしき。「邸宅」「豪邸」という名称は法律などで正式に決められた名称ではありません。 よって、その定義やイメージも人によって異なるかもしれません。 一般的には、「邸宅」というのは「大きな住宅」という意味合いで使われることが多く、 「豪邸」となれば、更に「大きくて豪華な住宅」というイメージで伝えられているようです。

マタニティ・シート(Maternity Sheets): 妊娠中に車を利用する際に、通常のシートベルトではお腹を圧迫するのを防ぐための補助具です

炎天下(えんてんか): 炎天下(えんてんか)は炎天の下(もと)、つまり焼き付けるように強い太陽の日差しの下という意味であり、炎天とは異なり地上の状態を指す表現である。 なお、「炎天下の下(もと)」や「炎天下の中」は重複表現である。 夏の風物詩として季語にもなっている。

北岳八角亭

2025.5.3