www.KAMPOO.com
Since 2004

現在地: ホーム > 韓国旅行 > 韓国見聞録 > 仁川空港で味わう“ワクワク・ドキドキ”…

仁川空港で味わう“ワクワク・ドキドキ”…

by 竹下 南

韓国に到着したとき、毎回必ず胸がキュンとなってしまう!
韓国に来た喜びからか、ハングルの世界への緊張感からか、憧れとも郷愁ともつかない何か不思議な感覚に襲われる。これは他の外国に行ったときには起こらないことゆえ、やはり初恋の人、いや初恋の「国」だからこそ感じる思いなのかもしれない…。特に夜間フライトで到着したときなどは、もうヤバイ…ことになる。
タクシーに乗って市内に向かうまでに目にする漢江沿いの淡い街路灯の数々。どこまでも続くオレンジ色の灯りに漢江が霞んで見えるとき「ソウルにやってきた…!」という実感が湧き、ワクワク・ドキドキ感も最高潮になる。

それにしても、この漢江沿いの灯りの美しさは一体誰の設計によるものであるのであろうか。ロマンティックなこのオレンジ色の灯りには世界中の誰もが魅了されること間違え無しと思ってしまうのだが…。

 常々感じることだが、ソウルの街の佇まいと漢江の組み合わせは世界の都市景観のなかでも5本の指に入る美しさではないかと思う。ソウルの街を南北に二分して横たわっている漢江。大都会の真ん中に大きな面積でたゆたっているこの河は昔からソウルの話題を作ってきた。映画に、テレビドラマに漢江は数多く登場するが、私が特に注目するのはミュージカル『地下鉄1号線』に登場する強烈な皮肉を発揮した一場面だ。キム・ミンギの作曲・演出で、1994年の初演からロングランを続けてきたこのミュージカルには、漢江を挟んで江北・江南という階層意識無しには語れないユニークな場面がある。
「江南の奥様」という皮肉をこめた場面の一部をご紹介したい。

ミュージカル「地下鉄1号線」より

♪わたくしたち、ソウルの中心、卵で言えば黄身、そう江南の奥様
  一番高い服を着て、街を闊歩
  狎鴎亭洞を練り歩き、ロッテ百貨店まで
  (中略)
♪わたくしたちの主人はみんな大物
  長・次官、財閥、将軍、高級公務員、国会議員
  主人公の意をくんでわたくしたちも近代化の先頭に立つのよ
  ちょうど30年前のように「どこかに土地が売りに出てないかしら」
  ちょうど30年前のように、サチギ、サッポッポ
♪わたくしたち、上流階級の寡婦がソウルを守る
  わたくしたちがいなけれな、アカの世界になっていたはず
  最近の若いのは、本当に何も知らないんだわ
  わたくしたち、最高の中の最高、つまり金持ち村の寡婦

(『地下鉄1号線』金重明:訳 より)

誰もが利用する地下鉄を題材として、ミュージカルを構成したキム・ミンギの力量もさることながら江北・江南の住民層の隔たりに象徴されるソウルの階層意識にも興味がやまない。さて2014年今日の状況下ではどうなのであろうか…、階層意識もさることながら、このところの船舶・地下鉄事故が連発している昨今の韓国情勢の気になるところではある…。

2002年秋、初めてのgodのコンサートを観たときのことを記したい。場所は地下鉄「西大門」駅近所に位置する『ポップコーン・ハウス』(今もあるのかしら…)。コンサートは夕方からだから、まだ随分と時間がある。こういう時ひとりで時間をつぶすのには何をしたらよいかと考える…。まァ、私はいつも美術館とか博物館とかに行くことにしているのだけれど、そこで地図に目をやると『西大門刑務所歴史館』がすぐそこにあるではないか。無邪気に、気楽に、ここで夕方までの時間を過ごすつもりでキップを買い、西大門刑務所歴史館へと入館していったのだが…。
実はここでの体験はそれから4年後に朝日新聞の声欄への投書として吐露することとなる。時代は2006年第1次阿部政権発足当時のことであった。

 阿部首相は首脳会談のために、韓国・中国を訪問するという。最初の外遊先が韓・中両国であるのは、冷え込んだアジア外交立て直しの意味から、政権のスタ-トとしては大変喜ばしい。そこでぜひ阿部首相にお願いしたいことがある。韓国を訪れたら『西大門刑務所歴史館』に行ってほしい。ここはかつて日本の植民地支配に反対して戦った独立運動家が弾圧、拷問、処刑された場所。日本人にはあまり知られていないが、ここでは歴史の事実が一般公開されている。

 数年前にソウル旅行で訪れたとき、ひとりでも多くの日本人にここに来てほしいと心の底から思った。そうしたら私たち日本人が、かの地でそう遠くない昔に何を行ってきたか、ひと目で理解できる。阿部首相が無理ならば、せめて日本人旅行者だけでも行って、見てきてほしい。

白状すると、この記事は朝日新聞紙上には載らなかった。だが私は2014年の今でもこのときの気持ちに変わりはない。
『西大門刑務所歴史館』の見学を後にして、ポップコーン・ハウスに戻ってくると、そこは若者たちの熱気でムンムンしていた。私のようなアジュンマは見事に皆無!だった。実際に初めて目にするgodは、弾けんばかりの若さで輝きながら歌い踊っていたが、何より驚いたのは、godと客席の距離感の近さである。3000席以上のコンサート会場でありながら、まるでライブ会場のごとく至近距離にいる彼らの姿。目と目が合ったり、声を掛けたり、これはまさにAKBのコンセプト=“会うことのできるアイドル”の先取りではないか! 3時間あまり休憩なしのステージは歌・ダンスの熱演はもちろんのこと、徹底したファンサービスが繰り広げられていた。これでは誰もがハマッてしまうことは確実だろう。
夢にまで描いたgodのコンサート会場を後にして、それと同時に『西刑務所歴史館』との対比がありすぎて、その夜は眠れなかった一夜だったことを思い出す…。- 2014.5. -