www.KAMPOO.com
Since 2004

現在地: ホーム > 韓国旅行 > 韓国見聞録 > 映画「ハルビン」

映画『ハルビン』

By 竹下南

映画『ハルビン』を観た。
日本公開初日の7月4日、朝10時35分上映の会は平日であるのにもかかわらず、多くの観客でいっぱいだった。 日本と韓国の歴史に関心のあるシニア層から明らかにヒョンビンのファンと見受けられる若い女性たちまで、午前中の劇場としてはめずらしく熱気にあふれていた。

『ハルビン』は4月に訪韓した際、ソウルの劇場で観たかったけれど、すでにどこも終了していて日本公開を待つしかなかった。しかし題材が題材だけに、日本公開はムリかな?と、なかば諦めていたところ、 ジャパンプレミアが東京都内で開かれ日本で公開されることがわかった。 ウ・ミンホ監督、ヒョンビン、リリー・フランキーがそれぞれこの作品に対する思いを語り、過酷なロケ地でのエピソードを披露して、期待は高まるばかり、さっそく公開初日に行ってきた。

それでは感想は?
「うーん、これはもう、ヒョンビンの安重根だ」
いくら髭をはやし、頭はボサボサ、汚れ切ったオーバーを着ていても・・・ヒョンビンの堂々した骨格、歩き方、表情、声・・・「韓国義軍」の生き残り闘志安重根の姿としては立派でカッコよすぎる。 有名俳優がリアルな歴史上の人物を演じることの難しさを感じてしまう。さらにシナ山での日本軍と戦闘後、韓国義軍の捕虜となった大日本帝国陸軍少佐・森辰雄に「家族はいるか?」 と問う場面、この人間的な一言が延いては伊藤博文暗殺へと繋がっていく重要なプロットであるのに、 見るものには、ソウルで彼の帰りを待っているソン・イェジンと赤ちゃんの顔が浮かんだのではなかろうか? “素”のヒョンビンが出てきてしまったのは、ファンサービス?と感じたのは、私だけだったかしら・・・

映画「ハルビン」の予告編(2025.7.4)

そしてもう一つ。
「うーん、この美しい風景は、どこ?」
とにかく全体的に暗いトーンのなかで、際立ったのは広大な砂漠や碧い湖面の美しさ・・・。 残虐な戦闘シーンにインサートされるこうした景色は、平和の象徴のごとく静かに語りかけてくる。また物語のかなめとして馬賊・および馬列が登場するが、これほど優美な馬の姿を見たことはない。これはもう一服の絵画だ。
終盤のクライマックスに向けて砂漠・草原・街中をゆく安重根たちの騎馬隊。 武器・爆薬を手に入れるために奔走しサスペンスドラマが展開されるなか、これから世紀の企てへと向かっていく息詰まる緊張感さえも、この美しさに吸収されて、思わず「きれい!」と心の中で叫んでしまった、ほど。

日本は1905年日露戦争に勝利し、1910年朝鮮を併合するに向けて朝鮮半島の支配を強めていった。 韓国では抗日武装闘争を展開するなか、安重根は国際法である「万国公法」に従って一部の捕虜を釈放した。結果、義兵部隊の位置が日本軍に知られて大敗してしまう。安重根はその報復としてハルビンで伊藤博文を暗殺することに・・・。
映画ではそうとは知らずに、ハルビン駅を得意げに側近と歩いているリリー・フランキー扮する伊藤博文の「マヌケ顔」が何ともおもしろく映っていた。

映画館を出るとき聞こえてきた女性ふたりの会話。
「もっと歴史を勉強しなければね・・・」
「学校では教えてくれなかったしね・・・」

私も
「ヒョンビン、ありがとう!」

ヒョンビン(安重根)とリリーフランキー(伊藤博文)

2025.7.7