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3年ぶりの韓国は…

By 竹下南

 2018年6月12日歴史的な米朝会談がシンガポールで行われたとき、偶然にもその様子をソウルのテレビで見ることができた。まさにこの会談に合わせて訪韓したかのようにタイミング良く、トランプ大統領と金正恩委員長との2ショットを韓国のテレビ画面で見ることができたのだ。
トランプ大統領と金正恩委員長の握手から始まったこの会談は世界中が見守る中、リアルタイムで放送され日本でも同様に一部始終が放送されていたそうである。当地のアナウンサーのしゃべる韓国語と字幕スーパーでなんとか内容的には理解できたが、「もっと韓国語を勉強しておけばよかった…」と、どれほど思ったことか。それでも洋の東西を越えた“老練なおじさん”と“挑みかかる若者”の一騎打は視覚的に見ても十分に楽しめた。
海千山千のトランプ氏にとって金正恩氏はまるで手中の孫悟空。トランプ氏の余裕たっぷりのエスコートぶりも「ここはアメリカ…?」と思ってしまうほど。またどこのメディアも述べていなかったが、シンガポール「カペラホテル」の正面に掲げられた米国の星条旗と北朝鮮の国旗がなぜか“色・☆”のデザインがぴったり合っていて、本当に似合いの旗だったことにも驚いた。
さて今回の会談は中身より枠組み合意が重要であって、トップ同士の握手(12秒間)が何よりも象徴的にそれを表していた。わずか数か月前までは一触即発も考えられたのにもかかわらず、いやはやナント平和な二人の姿だったことか・・・。

又来屋
ウレオッ(又来屋)と冷麺

午前中の会談が終わって、ワーキング・ランチの時間に私も近くの食堂に出かけた。
せっかくなので北朝鮮発祥の冷麺を「우래옥」(ウレオッ)で食べようと正午過ぎに行ったところ、その混雑ぶりに驚いてしまった。お店の人によると「今日は特別に混んでいる」とのこと。やはり皆、米朝会談に想いを馳せて冷麺を食べようと考えたのだろうか。
肝心の冷麺の味はというと…アッサリし過ぎていて、う~ン…他の店の冷麺の方が美味しかったかも。

 3年ぶりの韓国は相変わらず人々のエネルギーに満ち溢れていた。
地下鉄がホームに入って来るときの「ファンファーレ」の合図音楽。これを聴くと「ソウルに来た!」ことを実感する。たとえ疲れていても、とたんに元気が出てくるから不思議だ。
 でも旅人にとってはつまらなくなったこともある。以前はよく見かけた地下鉄内での物売りには会わなかったし、地下道での物売りもめっきり少なくなったように思う。屋台も夜だけ(場所によっては3時以降)とか…。仁寺洞のメイン通りも伝統的な店から若者好みの店に代わって韓国らしい魅力がなくなってしまった。
 ところで韓国の魅力って何だろう…。私にとっては、ひとことで言うならば、「混沌とした魅力」につきる。どこになんの掘り出し物があるか分からず、行き当たりばったりで自分の感覚・センス・力量によって思いがけない出会いがある。これまでどれだけ「胸キュン・ワクワク」の体験があったことか。ところが今ソウル市内を歩いていても平均化されたお店ばかりが目立ち、もはや私のソウル青春物語も終わりつつあることを実感せざるを得ないのが残念だった。

臨津閣
臨津閣

 さて翌13日は韓国の地方統一選挙。この日は国民こぞって選挙に参加するために休日となるという。だからこそ投票率も高い。韓国国民の政治意識の高さがわかるというものだ。
選挙結果はどの地方をみても民主党の得票率が抜きん出て60%以上を獲得していた。
 せっかくの休日なので(旅人には関係ないけれど)この日、今話題の南北の狭間に広がる「パジュ」へ行ってきた。分断区域を臨む「臨津閣」は休日のせいもあって内外の観光客でにぎわっていた。ここはパスポート無しで誰でも入れて、遊園地まであるソウル近郊の一大観光地。家族連れが多く、皆楽しげに食事をしたり遊んだりしている。

世界中で唯一の分断された国家がこれからどのようになっていくのか。
これ以上北へは行かない錆びついた線路の展示を見たり、途中までしか架かっていない橋を見たとき、分断されていた年月の長さを思い知らされたようで胸が痛んだ。

近い日に、まるで鳥のように自由に行きかう事ができるようになったら、「またここに来よう」と心につぶやいた…。

2018.7.1

※シンガポールで行われた米朝首脳会談の1ヶ月前に開かれた韓国と北朝鮮の首脳会談の場所である「板門店」についてもご覧ください。板門店の名前の由来などが分かります。